4日目【2017.11.19】くもりのち雨  6:00~14:00

 そんなこんなで寝るのが遅くなり、翌朝は携帯のアラームで目が覚めた。眠い。起きるのがつらかった。しかも、この日は朝探無しで、起き抜けにホテルのレストランに集合。6時半。ホテルの朝食バイキング、そんなに食べられそうにないと思ったが、いざ一回りしてみると、なんともワールドワイドなラインナップ。日本の漬物、梅干し、韓国のキムチ、コーンフレーク、グロサリー的なパン、麺皰、お粥、雑炊。台湾料理にウインナーとベーコン、スイカのジュースにヨーグルト。台湾バナナも。目移りして、つい皿に乗り切れないほどに取ってしまう。

 満腹の状態で、急ぎ部屋に戻り、荷物を抱えて玄関前に横付けしたバスに乗せる。集合時間の少し前に来たのだが、もう半分以上のスーツケースが車載済。聞けば、皆、双眼鏡を首にホテルの周りの植栽で鳥見をしているとのこと。今にも雨が落ちていそうな空で、風も強い。ドライバーさんが駆け寄ってきて私のザックを乗せてくれた。昨夜荷物の一番上に入れておいた「行動食」の包みを渡す。旅のしおりの「持ち物」に行動食とあったので買い込んできた「ビスコ」や「チョコ柿の種」「薄焼き塩せんべい」などだ。結局毎日3食豪勢な台湾料理だったので、ほとんど手つかずで残ってしまった。話のタネに位はなるだろうと「日本のお菓子」と言って渡したら笑ってうなづいてくれた。

 そうこうするうちに、皆、戻ってきてバスに乗り込み始めた。

 もう最終日、最後のポイントに向かうんだという気持ちがどの顔にも表れている。

バ スの窓からホテルの玄関の方を見ていたら、五百澤氏が大きなスーツケースを2つ、両手に下げて、段差を小走りに降りてくる。身体が大きいせいか、全然重そうでない。小柄なドライバーさんがバスの後方から走ってきて受け取ったが、ひとつづつ、よっこらしょと持ち上げていた。こんな所も頼れるガイド氏だとにんまりしてしまった。

 最終ポイントは台中市の都市公園だと聞いていた。

 ニューヨークのセントラルパークみたいな所か?それとも霞城公園みたいな公園か? 

 どう期待していいものか迷いながらバスに揺られていく。20分程で着くとのことだったが、バスはゆっくりと町中を抜けて、郊外の高台に向かっているようだ。 

 「台中都會公園」と書かれたアーチをくぐって整備された駐車場にバスが停まった。

 県民の森か、西蔵王公園というところか。

 都市公園ではなく、都会公園という名前だったのか。

 駐車場を抜ける通路で、もう、鳥の声がしている。皆、つい、木の間に鳥の姿を探してしまい、動けなくなる。皆の後ろで、ジェニファーさんが地元のバーダーと親し気に挨拶を交わしている。にこにこと優しい笑顔が印象的だ。

 「台中の鳥のこと、すごい人ね」と紹介されたが、どうやら台中市のバーダーの長的立場の人らしい。簗川支部長が県民の森に応援にかけつけたというところか。

 二人に促されて、園路を進む。いくらも進まないうちに、いきなり大きな鮮やかな青色の鳥が前方を横切って飛んだ。「おお!」と声が上がる。全長1m近いコンゴウインコだ。いくら南国でも、これは…と皆が目を丸くしていると、支部長氏が笑って「篭脱け」個体と説明してくれた。歓迎のつもりか(ただの散策に来た客とは違う我々の気迫を警戒したのだろう)コンゴウインコは何度も何度も旋回を繰り返した。インコには構わず、支部長氏は園路からそれて、奥に茂る芳原の方へ入っていく。皆が付いて行こうとすると、ジェニファーさんが止める。「コブラがいるかも。長靴はいてないとだめね」…って、それは長靴でもやばいでしょ、マングースでしょ、必要なのはと突っ込みたかった。そこで見られるはずのマミハウチワドリの声が、今日はしていないとのことで、先へ進む。

 

 舗装された園路の周囲にはたくさんの植栽があり、樹高も程々の木々が花を咲かせ、実をつけている。熱帯に近いのか、年中開花結実を繰り返しているのか。確かに鳥にとっては楽園だ。そんな中、ジョウビタキが出たという。藪を飛び出し、ブーゲンビリアの花のついた枝に停まった。山形では有り得ないとり合わせにシャッターを切りながら「なんでわざわざ雪国なんかで冬を越そうと思うのかねえ」というつぶやきがもれる。

 園の敷地のはずれ、柵の向こうに農地が広がっている辺りで、クロエリヒタキを待った。声はすれども姿は…状態で、一度頭上を横切って飛んだのを一瞬見たにとどまったが、そのサンコウチョウに似た美声は存分に堪能した。

 

 時折、ジョギングをする人と行きあいながら、園路を進む。シロガシラが樹冠に群れている。

 タイワンカケスも数羽で移動していく。と、頭上の枝にオウチュウが止まった」。近い。全然逃げる気配がない。もう1羽、別の所に現れた。皆がそちらに移動すると、先ほどのオウチュウが着いてくる。若い個体らしく、警戒心が薄いのか。とうとう、オウチュウと一緒に記念撮影までしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(写真注:左上の枝にオウチュウがとまっていました。このあと皆でこちらを向いて記念写真を撮りました)

ゴシキドリもじっくり観察させてもらえた。園路脇の木の頂から1m程の所の枝に停まったのだが、なかなか見つけられない。見つけても、双眼鏡から目を放すと、もう探せない。あの派手な豆色と目の周りの「五色」も、常緑樹林の中では保護色なのだと納得。暫く観察しているうちに、なんか変だよねと言う声が上がる。尾羽がない!何があったのか、よくみるとずんぐりむっくりの愛らしい姿だ。もう1羽、こちらは尾羽のある個体が飛んできて、皆、そうよね、この形よねとうなづいた。タイワンオナガはいかにオナガらしく、騒ぎ立てるし、モズはここでも可愛いモズ子。夾竹桃の白い花とポーズで台湾賞鳥華風。(鳥中華ではございません)

  トイレまで来たので、トイレ休憩。トイレ横にある自動販売機もなかなか面白い。「金色紅茶」「檸檬茶」あたりは判りやすい。「C&C lemon」はそのまま、あれれ、これは「可雨必思水語」どう見てもカルピスウォーターのパッケージ。中央に大きく広告している「黒松沙士」をご購入した方がいた。コーラのようだけど匂いは…サロンパス!

 

 再び出発し、今度はブラシの木やユーカリが街路樹になっている。その間をメジロやエナガがちらちら移動していく。シジュウカラもいる。まさに小鳥の声のシャワー。これは動画で音声も一緒に記録をと、カメラを操作するも、直ぐに止まってしまう。なんと電池切れ。

 

 時計の方も時間切れが近いようで、ガイドさんたちの足が速くなる。空は何とかもっているが、かなり蒸し暑くなってきた。もう、おしまい、これで台湾賞鳥も終わるんだと皆、重いアシドリになる(足取り)

 

 ラスト、湿地を残した区画にさしかかる。五百澤氏が急に機敏な身のこなしで園路を外れる。「います!」と押し殺した声で、水辺のアシの藪を指さす。マミハウチワドリが、素早い動きで鳴きながら見え隠れしている。10人余りが狭い場所で5mと離れていない場所の地面近くの小さい鳥を見ようとするとどうなるか。

 「もう1羽いる!」「あ、アオハウチワドリです!」興奮した五百澤氏の声で皆がさらに色めき立つ。鳥たちはギャラリーの騒ぎよりも、ハウチワドリ同士のウチワモメが大事とばかり、しばらく藪の中でちらちらやっていたが、やがて静まった。「みた…」「撮った~」双眼鏡やカメラを目から離し、放心状態の一同を、「はい、飛行機に間に合わなくなるね」とジェニファーさんが追い立てる。そうだ、飛行機だ。バスに乗り込む前に、スーツケースにカメラをしまう人はここでパッキングしなければならない。とうとう雨の落ちてきた駐車場でスーツケースを開く人々。ジェニファーさんがまた声をかけて回る。アスファルトの上で広げるように。草の上だと虫が一緒にパッキングされてしまう。わー、検疫だ、海外だ。いよいよ帰るんだ。

 

 と、パッキングの必要のない一団が、キマユムシクイを発見。日本にも居るとはいえ、こんな近くではっきり見られるなんて。スーツケースを放り出してカメラを抱えて走ってくる方も。トリたい気持ちはわかります。でもジェニファーさんが困ってます。

 何とか時間通りにバスが走り出し、数分もたたないうちに雨が本格的に降り始めた。

 雨に視界を遮られながらも、皆、名残惜しそうに窓の外を眺めている。

 □帰路

 

 一路台北市の桃園国際空港を目指すわけだが、新竹県竹北市まで降りてきて、コンビニ前でバスを止め、五百澤氏おすすめの台湾土産を教えてもらう。コンビニの品ぞろえが面白い。レジ前「おでん」が置いてある一方で、地元の調味料なども並んでいる。おすすめはハーブキャンディだった。缶入りと袋入りと、何種類かの味がラインナップされており、日本人には好評というのを教えてもらった。漢字表記で、内容と味は想像力で。

 

 「檸檬草って書いてるけど、なんでしょうねえ」「れもん…レモングラス?「あ、そっか。買い!」

 昼食はツバメマークの全家福客家菜館にて客家(はっか)料理をいただく。週末とあって、店内は家族連れで大入り満員状態。円卓の上も店内もにぎやかこの上ない。 客家料理の特徴の睡蓮の茎を煮びたしでいただく。そうか、睡蓮の茎ってこんなに細くて長いんだ。店内の騒音に紛れて、最後の鳥合わせをする。3日目44種、4日目34種。4日間合計では90種。(別記:確認種リスト参照)

 

 皆、思わずため息。

 

 隣の卓の子どもが不思議そうな顔をして見つめていた。 

あとは本当に一路、高速道路で空港を目指す。パーキングエリアでトイレ休憩を取ったが、あいにくバスを降りた側のトイレは改装工事中。おかげでぐるっとサービスエリアの店内を見ることに。サーティワンアイスやマクドナルドに交じって、ここにもミニ水族館風の展示があった。地元の名産品などもあったが、さすがに時間がなかった。バスに乗り込む前に、建物の軒先で並んでいるスズメに、これが台湾での双眼鏡の使い納めと、双眼鏡を向けた。

 

 雨模様の高速道路を走行中も、窓の外から目が離せない。渋滞もなく、高速で走りすぎる景色の中に、飛ぶ影はないか、枝に停まる姿はないかと目を凝らす。日本の谷戸に似た景色だなと思っていると、白っぽいノスリが飛んだりする。河川を渡る時は、水辺に白いサギの姿が点在している。ダイサギだ。

 

 向こうに新幹線の高架が見えると思ったら、オレンジ色の新幹線が通過していった。あれに乗っていたのは4日前の事だ。思えば随分と充実した鳥見時間を過ごしたものだ。

 

帰りも名古屋空港着の便で行く五百澤氏とも、出発ゲートの手前までは一緒に行けるとのこと。出国手続きを済ませて、土産を購入。五百澤氏お勧めの、台湾の野鳥の描いてある烏龍茶など購入。 

チャイナエアラインCI107便は20分遅れで搭乗案内があり、黄昏掛けた台湾を後にした。機内ではワインを何度もお代わりし、4日間寝食を共にした鳥友と話が弾み、あっという間に成田に着いた。 

 

 九州と同じくらいの大きさの島だという台湾。

 巡ったのもそのほんの1部分でしかないし、そこで出会えた鳥もまたほんの1部分だが、このツアーでしか得られなかった経験は、とてつもなく大きく、一生の宝である。10年後も変わらずこの胸の中に抱えていることだろう。でも、すでにかなりの数が死滅し始めている脳細胞たちにこの記憶をとどめておくことは期待できないので、宝物を取り出したとき、その輝きを思い起こす一助になればとこの旅行記をここに記し、ツアー報告とかえさせてもらうことをお許し願いたい。

 

 参加者11名、それぞれの胸に残る宝物はそれぞれ違うものだろう。それについては「参加者の感想」のページで。